補助金×AI / 解説
【2026年8月更新】AI研修に使える助成金|対象条件と、研修だけでは届かない部分
AI研修は人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象になり、中小企業なら訓練経費の75%と、訓練中の賃金1時間あたり1,000円の助成を受けられます。ただし要件は「実訓練時間数10時間以上」です。経費助成には1人あたりの上限があり、10時間以上100時間未満なら中小企業で30万円、eラーニングや通信制を含む場合は15万円です。宿題や事前学習の時間はこの10時間に算入できないため、時間を足せるかは研修会社の実施方法しだいです。見積もりを受け取った時点で確認してください。支給は労働局の審査によるもので、受給を確約するものではありません。
AI研修に助成金を使う場合、訓練時間が10時間以上あることが要件になります。研修の時間数が足りていないことに気づかないまま発注すると、助成金は下りません。何を確認し、どの順で準備すればよいかを、制度の条文に沿って整理します。
AI研修に使える助成金は「事業展開等リスキリング支援コース」
AI研修の費用に充てられる制度の本命は、厚生労働省の人材開発支援助成金です。7つのコースがあり、そのうち新規事業の立ち上げやDX推進に伴う人材育成を対象にしているのが「事業展開等リスキリング支援コース」です。AI導入そのものに使える制度は経済産業省系が中心で、全体像は補助金・助成金でAIを開発・内製するにまとめています。
対象になるのは、雇用保険適用事業所の事業主と、雇用保険の被保険者です。生成AIの業務活用研修も、職務に関連し、後述する事業展開等の計画に紐づいていれば対象に入ります。
助成率と助成額
中小企業と大企業で助成率が変わります。
| 企業規模 | 経費助成 | 賃金助成(1人1時間) |
|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 1,000円 |
| 大企業 | 60% | 500円 |
経費助成は受講料などにかかり、賃金助成は研修を受けている時間の人件費にかかります。研修中は業務が止まりますから、この賃金分が出るかどうかは実質負担に直結します。
ただし賃金助成が出ない場合があります。eラーニングによる訓練と通信制による訓練は、賃金助成の対象外です。この点は後述の時間設計に効いてきます。
1人あたりの上限は、訓練時間で変わります
経費助成には受講者1人あたりの上限があり、訓練時間数の区分で3段階に分かれます。
| 訓練時間 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
eラーニングまたは通信制を含む場合は上限が下がり、中小企業15万円、大企業10万円になります。これは通学制・同時双方向型と組み合わせて実施する場合も同じです。一部でもeラーニングを混ぜると、その訓練全体が15万円上限になります。
助成金の要件に合わせて設計したAI研修は10時間台から数十時間に収まることが多く、その場合は最初の区分=中小企業で1人30万円が上限になります。経費助成率は75%ですから、受講料が1人40万円を超えた分は戻りません(eラーニングを含む場合は20万円が分岐点)。ここは見積もりを取る前に押さえておくところです。
なお、1事業所が1年度に受給できる助成額の合計は1億円が上限です。これは経費助成の上限ではなく、賃金助成なども含めた受給総額の上限を指します。
厚生労働省は制度ページの冒頭で「訓練経費は無料になりません」と明示しています。全額が戻る制度ではありません。
対象になる条件
まず、訓練を始める前に整えるもの
意外に見落とされるのが、訓練そのものより手前の要件です。支給対象になる事業主は、次を満たしている必要があります。
| 整えるもの | 内容 |
|---|---|
| 職業能力開発推進者の選任 | 事業所ごとに選任します。人事労務の担当部課長などが想定されています |
| 事業内職業能力開発計画 | 労働組合等の意見を聴いて作成し、雇用する労働者に周知します |
| 職業訓練実施計画 | 事業内職業能力開発計画に基づいて訓練ごとに作成し、被保険者に周知します |
| 事業展開等実施計画(様式第1-3号) | 職業訓練実施計画届と併せて労働局へ提出します |
計画届の提出日までにこれらが揃っている必要があります。推進者の選任と計画の作成・周知には数週間かかることがあり、逆算スケジュールの起点はここになります。事業内職業能力開発計画は、厚生労働省が作成の手引きと企業の記載例を公開しています。
事業展開等実施計画に何を書くか
実務でいちばん詰まるのがここです。厚生労働省のQ&Aは、要求水準をこう示しています。
原則として、本助成金の計画届時点において、企業内のDX等の具体的な取組の内容が決まっている必要があります。
経営方針に「DXを推進する」と書いてあるだけでは足りません。何を、いつまでに、どう変えるのかが決まっていて、その中で今回の研修がどこに効くのかを説明できる状態が要ります。研修の日程だけ決めて計画書を後から埋める、という順番では通りません。
あわせて、受講する社員は計画届の時点で確定します(対象労働者一覧・様式第3-1号)。後から人を足すことはできません。
訓練そのものの3条件
そのうえで、訓練が次の3つをすべて満たす必要があります。1つでも欠ければ対象外です。
| 確認すること | 満たしていない例 | 満たしていない場合 |
|---|---|---|
| 実訓練時間数が10時間以上 | 時間数が10時間に届かない研修 | 研修会社に10時間以上にできるか確認する(後述) |
| OFF-JTである | 通常業務の中でのOJT、実務をしながらの指導 | 業務と切り離した場所(会議室・外部会場)で実施する |
| 職務に関連し、事業展開・DX化・人材育成計画のいずれかに紐づく | 「業務効率化のため」だけの説明 | どの類型で出すかを先に決める(後述) |
3つ目の紐づけは、次のいずれかに該当する必要があります。
- 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる訓練(事業展開は訓練開始日から3年以内に実施予定、または6か月前までに実施したもの)
- 企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり必要となる知識・技能を習得させる訓練
- 企業内の人事及び人材育成に関する計画に基づき、今後従事することが予定される職務に必要となる知識・技能を習得させる訓練(3年以内に従事予定の職務に限る)
3つ目の類型は、他の2つより手続きが重くなります。 中小企業に限り、あらかじめ認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があるほか、訓練を受ける労働者から承諾書を取得し、訓練終了後には実施状況報告書を提出します。さらに、計画で予定していた職務に全員を実際に従事させる義務があり、合理的な理由なく従事させなかった場合は不支給または支給決定の取消しになります。認定支援機関自身が実施する訓練も対象外です。
そもそも3つ目は、訓練開始時点で就いている職務とは異なる職務に向けた訓練であることが前提です(職業分類の小分類で判定)。現職のスキルアップには使えません。管理職研修・マネジメント研修・リーダーシップ研修も、この類型では対象外です。
生成AIの業務活用研修であれば、通常は2つ目のDX化の類型に当たります。どの類型で出すかを最初に決めてください——3つ目を選ぶと、上記の義務が一式ついてきます。
受講率にも条件があります
通学制と同時双方向型の訓練では、対象労働者ごとに実訓練時間数の8割以上の受講が必要です。欠席が多い受講者はその人だけ対象から外れます。人数が多い研修ほど、出席管理は申請の成否に直結します(大学や公共職業能力開発施設など特定の訓練機関の場合は、修了・卒業をもってこの要件に代えられます)。
なお、実訓練時間数10時間以上は計画届の提出時と支給申請時の両方で判定されます。計画では10時間でも、実施が短縮されて9時間台になれば落ちます。
このほかに、共通の要件があります
雇用関係助成金には、コース共通の受給要件があります。労働保険料を納付していること、支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反がないこと、審査に必要な書類を5年間保存することなどです。訓練の中身が要件を満たしていても、ここで落ちることがあります。制度全体の注意点は補助金・助成金でAIを開発・内製するにまとめています。
見積もりを受け取ったら、確認すること
受け取った見積もりの訓練時間が10時間に届いていない場合、そのままでは助成金は使えません。半日で完結するプログラムもあり、その場合は時間数の組み直しが要ります。
研修会社に確認するのは、次の3点です。
「10時間以上にできますか」
足りない時間を宿題や事前学習で埋める提案が返ってきたら、その場で断ってください。支給要領は、教材を配布して行う予習・復習(宿題、事前学習、確認テストなど)の時間を、総訓練時間数にも実訓練時間数にも計上しないと明記しています。それどころか、訓練時間に対して予習・復習が著しく多く、それが主目的と判断される場合は、訓練そのものが支給対象として認められません。時間合わせの宿題は、要件を満たさないだけでなく申請全体を危うくします。
ただし同じ「自習」でも、LMSで進捗管理されるeラーニングや、設問回答・添削指導を伴う通信制の形になっていれば、それは宿題ではなく訓練として算入できます。次の確認事項がそこにつながります。
要件は「訓練時間10時間以上」ではなく「実訓練時間数10時間以上」です。移動時間や規定を超える休憩、対象外の内容の時間は差し引かれます。数え方が最初から絞り込まれている、と理解しておいてください。
何が10時間に数えられるか
差し引かれるものばかりではありません。訓練の合間の小休止は1日あたり計60分まで(連続は30分まで)、開講式・閉講式・オリエンテーションは1つの計画あたり計60分まで、実訓練時間数に含められます。
もう1つ、計画にあらかじめ位置付けたキャリアコンサルティング(キャリアコンサルタントが実施するもの)は実訓練時間数に算入され、その費用も助成の対象になります。10時間の組み立てで足りないときの選択肢です。
一方、算入できないのは移動時間、上限を超えた休憩、そして前述の宿題・事前学習です。
「オンライン教材を混ぜますか」
混ぜる場合、経費助成の上限が1人30万円から15万円に下がります。通学や双方向オンラインと組み合わせた場合も、訓練全体が15万円上限です。しかもオンライン教材の部分には賃金助成が出ません。
さらに、混ぜられるオンライン教材はすでに一般に販売されている講座に限られます。自社のために作ってもらったものは対象外で、提供側が計画届の時点で自社サイトに講座情報を公開していることも要件です。「御社向けにeラーニングも用意します」という提案は、この点で通りません。
「増えた分の費用の根拠を説明できますか」
研修時間を伸ばせば価格は上がります。それ自体は自然ですが、支給要領は同じ内容なのに助成金を使うときだけ受講料が高い場合、その差額を対象経費として認めないとしています。2026年5月から「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出が必須になったのもこの趣旨です。増えた講師工数や教材など、助成金と無関係に説明できる根拠を出してもらってください。
拘束時間を増やしたくないとき
10時間にすると、その分だけ受講者の拘束時間が増えます。「土曜にやれば業務を止めずに済む」と考えたくなりますが、これは二重に不利です。時間外や休日に実施した時間は賃金助成の対象外で(振替休日は除く)、さらに割増賃金を含めて支払わないと事業主側の要件を欠いて訓練全体が不支給になります。
なお、年次有給休暇を与えて受講させた場合も対象外です。逃げ道はあります。就業規則などに所定労働時間を変更しうる旨があり、訓練前に「この期間は就業時間を○時〜○時に変更する」と具体的に周知していれば、変更後の時間を所定労働時間として扱えます。包括的な記載だけでは足りません。
発注先を選ぶときに確認すること
研修の実施には、制度上2つの形があります。
| 内容 | 制度上の呼び名 | |
|---|---|---|
| 委託する | 研修会社に企画から実施までを任せる | 事業外訓練 |
| 自社で主催する | 自社が企画・主催し、講師だけを呼ぶ(社内の人材が講師でも可) | 事業内訓練 |
どちらを選ぶかで、満たすべき要件が入れ替わります。多くの場合、委託のほうが通しやすくなります。理由は3つです。
実施方法の選択肢が減ります。 自社主催では通学制と同時双方向型しか認められず、eラーニングも通信制も使えません。10時間に足りない分をオンライン教材で埋める手が消えます。
講師個人に要件がかかります。 社外から呼ぶ場合は「その分野の講師経験3年以上」「実務経験10年以上」「その訓練が取得を目標とする情報処理系資格(ITSS/DSS-Pレベル3・4)の保有」などのいずれか。生成AIは登場から日が浅く、実務10年は現実的ではありません。社内の人材を講師に立てる場合はさらに狭く、講師経験3年のルートが使えません。
社内講師の人件費は経費助成の対象外です。 戻るのは会場費や教材費などに限られます。
一方、委託であれば講師要件はかかりません。代わりに発注先が次を満たしているかを、計画届の前に確認してください。
- 定款や登記簿の事業目的に「教育訓練事業」が記載されている法人であること
- 日本国内の法人であること
- 社会保険労務士が経営・運営に実質的に関与している法人でないこと
- 支給申請承諾書(様式第12号)に対応してもらえること(労働局の審査への協力や、不正受給時の連帯債務に承諾する書類です)
カリキュラムで確認すること
ここが最も見落とされます。 AI研修なら何でも対象になるわけではありません。厚生労働省は、対象にならない訓練としてこう明記しています。
単に既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合や、コンサルタントによる指導は、対象になりません。
ただし「使い方」だから即アウト、ではありません。厚生労働省のQ&Aはこう線を引いています。
単に一般的なアプリケーションを使用して文章・数値の入力や、書式・レイアウトの変更程度の初歩的な操作を行う内容のみである場合は、当該訓練部分は助成対象となりません。一方、上記のような初歩的な操作ではなく、具体的な業務の効率化を実施するための技術や知識を習得するためのもの…である場合は助成対象となり得ます。
基準は「初歩的な操作のみか、業務効率化のための技術・知識か」です。ChatGPTやClaudeを題材にしていても、業務効率化の手法を身につける構成なら対象になり得ます。逆に、機能の紹介と操作手順だけで終わるカリキュラムは落ちます。
もう1つ、事業主向けのQ&Aに具体的な線引きがあります。
当該事業所の業務マニュアル等を題材にして、実際の事業活動で利用するツールを作成する場合は…対象外となる可能性があります。一方で、通常の事業活動の一環から切り離して、訓練用に別途用意された作業環境において、ツールの作成を目的としたアプリケーションの活用方法を学ぶ訓練であって、企業独自のツール開発を目的としない場合については対象となり得ます。
境界は「本番の業務ツールを作る」か「作り方を学ぶ」かです。研修の場で実際に使うツールを完成させると、訓練ではなく事業活動と見なされます。
つまりカリキュラムを見て、次の2点を確認してください。
- ツールの操作説明で終わっていないか。業務をどう分解して何をAIに任せるかという判断の部分が入っているか
- 研修中に本番で使うツールを作らせる構成になっていないか。訓練用の題材で作り方を習得し、自社に戻って組み立てる形になっているか
判断が分かれうる領域です。カリキュラムを受け取ったら、計画届の前に労働局へ相談することをおすすめします。
ただし、研修を10時間にしても「使える」ようにはならない
ここまでは制度の話です。ここからは、助成金で研修を買おうとしている会社にとって、おそらくもっと重要な話になります。
研修を10時間に組み直し、助成金が下りたとします。受講者は全員、GPTsの作り方を覚えて帰りました。それで、社内の業務は変わるでしょうか。
変わりません。少なくとも、経営が期待する水準では変わりません。
研修で届く水準と、実務で必要な水準
研修で作れるようになるものと、業務で動かし続けるものの間には、距離があります。
| 到達点 | |
|---|---|
| 研修だけで届く水準 | 自分の業務に合ったGPTs・Claudeプロジェクトを組み立てられる。定型的な文章作成や要約を任せられる |
| 実務で必要になる水準 | 受注から出荷までを工程ごとに管理し、在庫を複数のサービス間で突き合わせ、広告費を配分して商品別の損益を出し、数字の不整合を検査して止める |
下の行は、当社が自社の事業運営で実際に動かしている水準です。工数がどれだけ減るかを金額で見た実例は、省力化投資補助金でAIが対象になる条件にまとめています。
この差は、研修の時間を10時間から20時間に伸ばしても埋まりません。足りないのは知識の量ではなく、作ったものを業務に載せて回し続けるための土台だからです。
間に何が挟まっているのか
業務でツールを使い続けるには、作ったあとに「業務に載せる」「回し続ける」「壊れたら直す」という工程が続きます。この4工程を誰が抱えるかが、段階によって変わります。
1つは、開発を工程に載せる進め方そのものです。これを非エンジニアが自力でゼロから組み立てるのは現実的ではありません。すでに用意された基盤を使うか、誰かに組んでもらうことになります。工程の中身はAI人材の育成|3ステップで推進担当を育てるで扱っています。
もう1つは、伴走です。基盤があっても、最初の数か月は「この業務は任せていいのか」「この作り方でいいのか」の判断が続きます。ここで止まる会社が多い。研修は知識を渡せますが、目の前の業務についての判断は渡せません。サービスとしての形はCAOのサービス紹介にまとめています。
では、研修に意味がないのか
そうではありません。順序の問題です。
全社の理解が揃っていない状態で開発だけ始めると、作ったツールが使われません。逆に、研修だけやって基盤と伴走がないと、覚えた作り方が個人の便利ツール止まりで終わります。研修は入口として要る。ただし入口だけでは出口にたどり着かない、というだけのことです。
助成金の計画を立てるときは、この順序を先に決めてから、どこに制度を充てるかを考えると無駄がありません。
「研修とセットでツールも」という提案には注意してください
厚生労働省は、この制度をめぐる不適正な勧誘について名指しで注意喚起しています。挙げられている例の1つが、AI研修に直接関わるものです。
AI研修とAIツールの導入をセットで行うことにより、AIツールの導入費用についても研修費用として申請することができる
これは誤りです。AI研修の費用は対象経費ですが、AIツールの導入費用は対象経費ではありません。
同じ注意喚起では、助成金の申請手続き業務が社会保険労務士の独占業務であることにも触れられています。社労士でない者が報酬を得て申請書の作成や提出代行を行うことは禁止されており、無償と謳っていても、受講料の中に申請手続きの対価が含まれていると評価される場合は問題が生じるとされています。
「申請までまるごとお任せください」という提案を受けたら、その業務を誰が担うのか、費用がどこに含まれているのかを確認してください。
申請の進め方と、逆算のしかた
研修をやりたい日が決まっているなら、そこから逆に数えます。
| いつ | やること |
|---|---|
| 研修日の6か月前〜1か月前 | 職業訓練実施計画届・事業展開等実施計画(様式第1-3号)・カリキュラムを労働局へ提出 |
| その前まで(数週間みておく) | 職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画を作って社員に周知 |
| さらにその前 | 研修会社を決め、カリキュラムと時間数を確定。労働局に事前相談 |
| 日程や内容が変わったら | 実施前に変更届を提出(出さずに変えると、その部分が受講時間として数えられません) |
| 研修当日 | 出席記録を取る(8割以上の受講が必要) |
| 終了日の翌日から2か月以内 | 支給申請 |
早すぎる提出も受理されません。6か月前より前には出せない点に注意してください。
申請では、会社と研修の実施側と労働局が、それぞれ別のタイミングで動きます。
| 時期 | 会社(申請者) | 研修の実施側 | 労働局 |
|---|---|---|---|
| 計画届の提出前 | 推進者の選任・事業内職業能力開発計画の作成と周知 | — | — |
| 訓練開始の6か月前〜1か月前 | 職業訓練実施計画届・事業展開等実施計画を提出 | カリキュラム・実訓練時間・受講案内を提供 | 受付・確認 |
| 訓練期間中 | 出席記録・対象労働者一覧を整備 | 訓練を実施 | — |
| 訓練終了日の翌日から2か月以内 | 支給申請書類を提出 | 支給申請承諾書などを提供 | 受理 |
| 審査後 | 支給決定・入金 | — | 審査・支給決定 |
期限が2つあります。計画届は6か月前から1か月前までの間——早すぎても受理されません。そして支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内で、これを過ぎると対象外になります。訓練が終わって気が緩む時期に置かれている期限なので、実施前からカレンダーに入れておいてください。
1か月前という期限は、書類を提出した日(郵送や電子申請の場合は労働局に到達した日)で数えます。不備があれば差し替えになりますから、その分を織り込んで動くのが安全です。
誰が申請するのか
申請の主体は会社です。研修会社は申請を代行できません。訓練の実施側が提供できるのは、計画届や支給申請の添付資料——カリキュラム、実訓練時間の内訳、受講案内、実施証明、支給申請承諾書——までです。
発注先が教育訓練機関の要件を満たしているかは、計画届の提出前に必ず確認してください。前述の4項目です。
資金繰り——助成金は後払い
見落とされやすいのが入金のタイミングです。助成金は後払いで、研修費用はいったん全額を会社が支払います。支給申請ができるのは訓練が終わってからで、審査を経て入金されるまでにさらに時間がかかります。
つまり、研修費用の全額を数か月立て替えることになります。資金繰りの計画に、この期間を入れておいてください。
あわせて、受講する社員に費用を一部でも負担させると、経費助成の対象になりません。受講料を給与から差し引くような扱いは避けてください。
2026年度に変わった点
制度は毎年変わります。2026年度(令和8年度)に入ってからの変更で、影響が大きいものを挙げます。
受講料等の価格設定に関する疎明書が必要になりました(様式第28号)。2026年5月14日時点で支給申請が行われていないもの、支給または不支給の決定がされていないものにも適用されます。過去に計画届を出していても対象になる点に注意してください。あわせて、この改正に電子申請の画面が対応していないため、申請時は「その他管轄労働局長が必要と認める書類」の欄に疎明書を添付する運用になっています。
設備投資加算が新設されました(2026年4月8日・中小企業のみ)。通常の助成とは別枠で、導入費用の50%が支給されます(1人15万円、10人以上で150万円が上限)。
条件は4つです。①訓練が通学制または同時双方向型であること ②実技の訓練で機器・設備等を実際に使用すること ③訓練終了日の翌日から1年以内に賃金を5%以上(または資格等手当で3%以上)引き上げること ④訓練終了後、加算の支給申請日までにその機器と同種のものを新たに導入すること。
対象となる機器からパソコン・タブレット・スマートフォンおよびその周辺機器は除かれています。ただし支給要領は、導入方法としてデータベース構築、システム導入、専用アプリ開発に係る経費も対象と明記しています。
つまり「PCでツールの使い方を学ぶ」型の研修では取りにくく、実技で使うAIシステムと同種のものを導入する設計なら成立の余地があります。判断が割れる領域なので、狙うなら計画届の前に労働局へ相談してください。
なお、事業展開等リスキリング支援コースは令和4年度から8年度までの期間限定の制度として創設されたもので、令和8年度末までの時限措置とされています。延長の有無について公式の発表は確認できていません(2026年8月時点)。着手時期を検討する際は、この点を織り込んでおいてください。
研修以外に使える制度
研修費に充てられる制度は、人材開発支援助成金の他コース(人への投資促進コース)にもあります。デジタル化・AI導入補助金はツール導入が主体で、研修単独では申請できません。AI導入そのものに使える制度を含めた全体像は補助金・助成金でAIを開発・内製するにまとめています。
なお、サブスク型の研修サービスを使う場合は「定額制サービスによる訓練」という別枠になります。経費助成のみで賃金助成はなく、他の実施方法と組み合わせることもできません(定額制だけで10時間以上を満たす必要があります)。
確認チェックリスト
ここまでの内容を、確認する順にまとめます。
1. 自社側で整える(計画届の提出日まで)
| 確認すること | 落ちる例 | |
|---|---|---|
| □ | 雇用保険の適用事業所であり、受講者が被保険者である | 役員のみ、業務委託の人を含めている |
| □ | 職業能力開発推進者を選任した(事業所ごとに1名以上) | 選任が計画届の後になった |
| □ | 事業内職業能力開発計画を作り、社員に周知した | 作っただけで周知していない |
| □ | 事業展開等実施計画(様式第1-3号)に、DX等の具体的な取組を書ける | 「DXを推進する」だけで中身が未定 |
| □ | 受講者を確定した(様式第3-1号) | 後から人を足そうとした |
| □ | 労働保険料を納付している/過去1年間に労働関係法令の違反がない | — |
2. 研修の中身を確認する
| 確認すること | 落ちる例 | |
|---|---|---|
| □ | 実訓練時間数が10時間以上ある | 宿題・事前学習で時間を埋めている |
| □ | 業務と切り離した場所で実施する | 自席や執務スペースで受講させる |
| □ | どの類型で出すか決めた(通常はDX化の類型) | 人事・人材育成計画の類型を選び、付随義務に気づいていない |
| □ | カリキュラムが操作説明で終わっていない | 機能紹介と手順だけの構成 |
| □ | 研修中に本番で使うツールを作らせない | 自社の業務ツールを完成させる演習 |
| □ | 受講者が8割以上出席できる日程 | 繁忙期に重ねて欠席が出る |
| □ | 所定労働時間内に実施する | 土日開催、年休を使わせる |
3. 委託先を確認する(研修会社に頼む場合)
| 確認すること | 落ちる例 | |
|---|---|---|
| □ | 定款・登記簿の事業目的に「教育訓練事業」の記載がある | 記載がないまま計画届を出す |
| □ | 日本国内の法人である | 海外法人と直接契約する |
| □ | 社労士が経営・運営に実質的に関与していない | 「申請までまるごと」を謳う体制 |
| □ | 支給申請承諾書(様式第12号)に対応してもらえる | 支給申請の直前に断られる |
| □ | オンライン教材を混ぜる場合、一般に販売されている講座である | 自社向けに作ってもらった教材 |
| □ | 増えた費用の根拠を、助成金と無関係に説明できる | 助成金を使うときだけ受講料が高い |
4. 期限を押さえる
| いつ | やること | |
|---|---|---|
| □ | 研修日の6か月前〜1か月前 | 計画届・事業展開等実施計画・カリキュラムを提出(早すぎても不可) |
| □ | 日程や内容が変わったら | 実施前に変更届を出す |
| □ | 研修当日 | 出席記録を取る |
| □ | 終了日の翌日から2か月以内 | 支給申請 |
| □ | 支給決定後5年間 | 関係書類を保存 |
5. お金の見通しを立てる
| 確認すること | 目安 | |
|---|---|---|
| □ | 1人あたりの経費助成の上限を超えていないか | 中小・10〜100時間なら30万円(=受講料40万円まで) |
| □ | オンライン教材を混ぜると上限が下がることを織り込んだか | 15万円(=受講料20万円まで) |
| □ | 立替期間を資金繰りに入れたか | 研修費は全額先払い、入金は申請後さらに数か月 |
| □ | 受講者に費用を負担させていないか | 一部でも負担させると経費助成の対象外 |
地域の制度も含めて、自社が使えるかを確かめる
国の制度だけを見て判断すると、取りこぼしが出ます。都道府県や市区町村が独自に設けている人材育成の支援制度があり、条件が合えば国の制度より使いやすいことがあります。
一方で、同じ経費に複数の制度を重ねて申請することは原則できません。国の助成金と自治体の補助金のどちらを使うかは、対象経費の範囲と補助率の両方を見て決めることになります。
自社の所在地と規模で使える制度は、補助金かんたん診断で確認できます。国の制度と地域の制度の両方を対象にしているので、地域の上乗せがあるかどうかもここで分かります。
制度の詳細や個別の判断については、管轄の都道府県労働局にご確認ください。支給を保証するものではありません。
AI研修に助成金を使うかどうかを決める前に、確かめておきたいことがあります。研修が終わった翌月、社内で何が変わっているか。そこまで描けているなら、制度は迷わず使ってよいと思います。描けていないなら、先に決めるのは制度ではなく順序のほうです。
自社に合う進め方は、30分の無料相談でご相談いただけます。
本記事の制度に関する記述は、厚生労働省「人材開発支援助成金」および「事業展開等リスキリング支援コース 支給要領(令和8年5月14日版)」「同 ご案内・詳細版(令和8年5月14日版)」「同 概要リーフレット(令和8年4月8日版)」「同 事業主向けQ&A(令和6年10月版)」に基づきます(2026年8月1日確認)。制度は改正されることがあるため、申請前に最新の支給要領をご確認ください。運営:OUKA IT VENTURES - FZCO/国内販売代理店:株式会社KUROKO。
よくある質問
半日のAI研修でも助成金は使えますか?
そのままでは使えません。事業展開等リスキリング支援コースは実訓練時間数が10時間以上であることを要件にしているためです。研修会社に確認するのは2点です。1つは通学制または同時双方向型で10時間以上にできるか。もう1つはオンライン教材を混ぜるかどうかで、混ぜると経費助成の上限が1人30万円から15万円に下がり、その部分に賃金助成も出ません。
宿題や事前学習の時間は訓練時間に含められますか?
含められません。支給要領は、教材を配布して行う予習・復習(宿題、事前学習、確認テストなど)の時間を、総訓練時間数にも実訓練時間数にも計上しないと定めています。さらに、訓練時間に対して予習・復習が著しく多く、それが主目的と判断される場合は、訓練そのものが支給対象として認められません。時間合わせのために宿題を積むのは、要件を満たさないだけでなく、申請全体を危うくします。
申請はいつまでに何をすればいいですか?
訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、職業訓練実施計画届と事業展開等実施計画を管轄の労働局へ提出します。早すぎても受理されない点に注意してください。その前段として、職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の作成・周知が必要です。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内で、これを過ぎると対象外になります。