補助金×AI / 解説
【2026年9月更新】ものづくり補助金でAI開発は対象?第1回公募の革新枠と「新規事業を作る」採択の通し方
ものづくり補助金の後継として2026年度に新設されたのが「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」で、AIの開発が乗るのは革新的新製品・サービス枠です。第1回公募の申請受付は2026年9月30日から10月30日18時まで。ただし公募要領は「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないもの」を対象外と明記しており、「AIで革新的な新製品・サービスを開発する」こと、付加価値額の年平均成長率4.0%以上と3〜5年の事業計画を示せるかが採択の核になります。そして採択で本当に問われるのは、AIの使い方より「新規事業を成功させるナレッジ」です(採択・受給を確約するものではありません)。
「ものづくり補助金で、AIの開発はできるのか」。結論から言うと、革新的新製品・サービス枠(旧ものづくり補助金に相当)で対象になり得ます。ただし、既製のAIツールを買って入れるだけの「単なる導入」は公募要領で対象外と明記されており、AIで革新的な新製品・サービスを開発し、付加価値額の向上を3〜5年の事業計画で示せるかが採択の分かれ目です。
そして最も大切なのは、採択で本当に問われるのが「AIの使い方」よりも「新規事業を成功させるナレッジ」だという点です。AIで開発を速くできても、「誰の・どんな課題を・なぜ新しく解けるのか」を外せば、不採択になるだけでなく事業そのものが立ち上がりません。
この記事では、(1)第1回公募の受付期間と制度の位置づけ、(2)AI開発が対象になる条件と採択の核、(3)申請前に必ず確認する要件と対象外、(4)採択の本丸である「AIで新規事業を開発する」具体的な型、(5)補助率・上限・申請の流れ、までを順番に整理します。制度の全体像はAI開発に使える補助金制度の選び方も合わせてご覧ください。
ものづくり補助金の後継は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」【第1回公募 2026年9月30日受付開始】
「ものづくり補助金」の役割は、2026年度から「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」へ引き継がれました。第1回の公募要領は2026年6月29日に公開され、申請受付は2026年9月30日(水)から10月30日(金)18時までです。
ここで押さえておきたい点が1つあります。これは旧制度の「統合」ではなく、新しく作られた別の補助金です。公式サイトにも「『中小企業新事業進出補助金』と『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』とは異なる補助金です」と明記されており、公募要領でもこれらは別々の制度として扱われています。旧2制度はそれぞれ別のサイト・事務局で案内されています。
この区別は実務に効きます。旧ものづくり補助金などで採択・交付決定を受けた実績があると、本補助金に申請できない場合があるためです(後述)。
| 枠 | 何を支援するか | AI開発との関係 |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | AI開発が乗るのはここ(旧ものづくり補助金に相当) |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 新規事業としてAIを使う場合の選択肢 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化 | 輸出体制の強化が主目的の場合 |
検索でなじみのある「ものづくり補助金」という名前で情報を探す方が多いため本記事もその名で解説しますが、申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください(第1回公募要領は2026年8月28日に1.2版へ改訂されています。受給を確約するものではありません)。各制度を横断した補助率・対象経費の早見はAI開発に使える補助金制度の選び方にまとめています。
第1回公募のスケジュールと、先に着手すべき2つの手続き
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公募開始 | 2026年6月29日(月) |
| 申請受付 | 2026年9月30日(水)〜 |
| 応募締切 | 2026年10月30日(金)18:00 厳守 |
| 採択結果発表 | 2027年1月(予定) |
| 交付申請 | 原則、採択発表日から2か月以内 |
| 補助事業の実施期間 | 革新枠は交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内)。新事業進出枠・グローバル枠は14か月以内(同16か月以内) |
| 実績報告 | 補助事業を完了した日から30日を経過した日、または補助事業完了期限日 |
つまり、10月30日に申請しても採択がわかるのは2027年1月、そこから交付申請と交付決定を経て、ようやく発注できます。補助金は後払いなので、立て替えが始まるのはさらにその先です。資金繰りは、この時間軸で見てください。
締切から逆算すると、事業計画の中身を考える前に走らせておくべき手続きが2つあります。どちらも公募要領に「手続きの遅れによる申請期限の延長等は一切認められません」と書かれています。
- GビズIDプライムアカウント:電子申請に必須で、発行に1週間程度かかります。
- 一般事業主行動計画の策定・公表:次世代育成支援対策推進法に基づく計画を「両立支援のひろば」で公表することが要件で、公表手続きに1〜2週間程度かかります。
この2つは事業計画の出来と関係なく、待ち時間だけが必要です。先に走らせておくのが安全です。
制度の一次情報は事務局の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイトで公開されています。公募要領のPDFもここから確認できます。
AI開発は対象になる?──「導入」はNG、「革新的な開発」なら革新枠
ものづくり補助金(革新枠)でAIが通るかどうかは、「導入」か「開発」かで分かれます。
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Q["AIで何をする?"]
Q --> A["既製AIツール/SaaSを<br/>契約して効率化"]
Q --> B["AIで新しい製品・サービス・<br/>事業を開発する"]
A --> A2["「単なる導入」<br/>革新枠の趣旨に合いにくい<br/>(導入型の制度へ)"]
B --> C{"同業ですでに<br/>相当程度普及している?"}
C --> C1["Yes:対象外の可能性"]
C --> B2["No:革新枠で対象になり得る<br/>付加価値向上の3〜5年計画が要る"]
これは運用上の傾向ではなく、公募要領に書かれている線引きです。革新枠について、公募要領は補助対象にならないものを3つ挙げています。
- 「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないもの」
- 「既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業」
- 「業種ごとに同業の中小企業者等(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)において既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発」
3つ目は見落とされがちです。同業他社がすでに当たり前に使っているAIツールを自社にも入れる、という計画は「相当程度普及している」に触れる可能性があります。自社が該当しそうかは、次の3つを当ててみてください。
- 同業・同一地域の競合で、公開情報(サービスページ・プレスリリース)から同種の機能を提供していると確認できる会社は何社あるか
- その機能は、汎用のAIツールやSaaSの標準機能として市販されているか
- 解こうとしている課題は「業界共通の課題」か、それとも「自社の顧客に固有の課題」か
1で複数社が挙がり、2がYesなら、切り口を変えたほうが安全です。逆に、自社の顧客・課題に合わせてAIで新しい価値を生み、粗利(付加価値額)が継続的に増える計画なら、「開発」として評価され得ます。
なお、効率化・省力化が主目的なら、ものづくり(革新枠)より省力化投資補助金でAIが対象になる条件のほうが合うケースもあります。目的(革新的な開発か、省力化か)で適した制度が変わります。設備でも省力化でもなく、社員にAIを教える研修費に充てたい場合は、使う制度そのものが別建てになります。対象になる条件は研修費に助成金を充てるときの条件にまとめています。
採択の核は「革新性・付加価値額・3〜5年の事業計画」
革新枠の審査で問われるのは、技術の新しさだけではありません。次の3つを事業計画で示せるかどうかです。
- 革新性:既存の延長ではなく、自社にとって(あるいは地域・業界にとって)新しい取り組みか。
- 付加価値額の向上:付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率が4.0%以上というのが要件です。3〜5年の事業計画期間の最終年度で達成する必要があります。判定は補助事業単体ではなく事業者全体の付加価値額で行われるため、AIの新規事業が伸びても本業が落ちれば未達になります。
- 3〜5年の事業計画:補助金が出て終わりではなく、数年かけて事業として成立・成長する道筋を描けているか。
ここで多くの中小企業がつまずきます。AIの技術的な実現性は説明できても、「その事業が本当に顧客に求められ、付加価値を生み続けるのか」という新規事業としての筋を語れないのです。これは補助金審査に限らず、新規事業の成否そのものを左右します。
申請前に必ず確認すること(賃上げ・最低賃金・対象外)
補助金の検討は、上限額から入りがちです。ただ、先に見るべきものが2つあります。自社が要件を満たし続けられるか。そして、そもそも申請できるか。どちらも金銭のリスクに直結します。
未達だと返還義務が生じる2つの要件
3〜5年の事業計画期間について、次の2つは目標未達の場合に補助金の返還義務が生じます。
| 要件 | 水準 | 未達のとき |
|---|---|---|
| 賃上げ要件 | 一人当たり給与支給総額の年平均成長率 3.5%以上 | 補助金交付額に未達成率を乗じた額を返還 |
| 事業場内最賃水準要件 | 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より 30円以上高い水準(毎年) | 補助金交付額を事業計画期間の年数で割った額を返還 |
ここで見落とされやすい点があります。3.5%はあくまで下限で、実際の判定は申請時に自分で設定した目標値に対して行われます。事務局も「基準値以上の賃上げを行っている場合であっても、申請時に設定した目標値を下回る場合には、要件を満たさないこととなります」と明示しています。高い目標値は審査で評価される一方、そのぶん返還のリスクも上がります。
補助上限額を引き上げる「賃上げ特例」を使う場合は、一人当たり給与支給総額の年平均成長率が合計+6.0%以上(基本要件の3.5%+2.5%)、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より合計+50円以上とさらに上がります。こちらも未達なら、引き上げ分は全額返還です。なお賃上げ特例は、素の補助上限額に達する規模の経費計画であることが前提で、革新枠では地域別最低賃金引上げ特例との併用や再生事業者への適用ができません。
年平均成長率は複利で計算します。5年計画で年平均6.0%なら、最終年度の一人当たり給与支給総額は初年度比で3割以上増える計算です。数年先の賃金水準を約束する要件なので、補助金の額だけを見て決められる話ではありません。
そのほかの基本要件(3〜5年の事業計画で満たすもの)
上の2つを含め、基本要件は6件あります。残りは次の4件です。
- 付加価値額要件:後述のとおり年平均成長率4.0%以上(事業者全体で判定)
- ワークライフバランス要件:一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」で公表。従業員100人以下の企業も必要です
- 子育て等に関する職場環境整備要件:3つの選択肢から1つを選び、応募申請時に事業計画へ記載し、実績報告時に証憑を提出
- 金融機関要件:金融機関から資金提供を受けて実施する場合は「金融機関による確認書」の提出が必須
補助金は後払いなので借入で立て替える会社が多いはずです。借りるなら確認書が要る、という順番で段取りしてください。
申請できない事業者
次に当てはまると、そもそも補助対象外です。規模の小さい会社ほど該当しやすい項目があります。
- 従業員が0名の事業者(役員のみで従業員を雇っていない場合は対象になりません)
- 創業1年未満の事業者(ただし新事業進出枠に限る)
- 申請締切日を起点に16か月以内に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・本補助金の採択を受けた事業者(採択を辞退した場合を除く)。申請締切日時点でこれらの交付決定を受けて補助事業を実施中の場合も同様です
- 事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の3つについて、過去3年間の交付決定が合計2回以上ある事業者
- みなし大企業、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える中小企業者
「以前ものづくり補助金を使ったことがある」という場合は、16か月以内の採択と過去3年で2回以上の交付決定に当たらないかを先に確認してください。要件は公募回ごとに変わり得ます。自社が当てはまるかどうかの最終的な確認・判断は、申請主体である企業の責任です(採択・受給を確約するものではありません)。
【本丸】AIで「新規事業を開発する」とは──虎の巻メソッド × AI
「単なる導入」と「革新的な開発」を分けるのは、新規事業開発のナレッジです。新規事業は、技術や資金ではなく「誰も欲しがらないものを、欲しがられているか確かめないまま作ってしまう」ことで失敗します。これを避ける再現可能な型が、当社がまとめた新規事業開発メソッド「虎の巻」です。背骨は WHO(誰に)→ WHAT(何を)→ HOW(どう届ける) の順で考え、すべての判断を顧客理解に紐づけることです。
虎の巻は、次の5フェーズを上から順に確かめます。各フェーズに「クリアすべき問い」があり、答えが出るまで次へ進みません。
| # | フェーズ | 確かめる問い | 補助金の事業計画での意味 |
|---|---|---|---|
| 1 | WHO:市場と顧客を選ぶ+インサイト発掘(CPF) | 顧客は本当にその課題を抱えているか/お金を払うほど切実か | 革新性と付加価値の出発点になる「課題設定」 |
| 2 | WHAT:インサイトをコンセプトに変える | その課題に、自社の何が”答え”として効くか | 提供価値(便益+信じられる根拠)の言語化 |
| 3 | POC:最小コストで検証(PSF/SPF) | その解決策・製品で課題を解けるか・作れるか | 「どう検証して確証を得るか」を計画に書ける |
| 4 | PMF:市場に受け入れられたかを数で測る | 顧客が「それなしでは困る」状態か | ここまでの確証が事業計画の説得力になる |
| 5 | HOW:PMF後にスケール(GTM) | どう効率よく届けるか | PMFの確証が出てから着手(前倒しは禁物) |
鉄則は「PMF(市場に受け入れられた確証)が出るまで、広告・採用・拡販にアクセルを踏まない」こと。補助金で資金がついた瞬間に作り込み・拡販へ突き進むのは、最も多い失敗です。革新枠の事業計画も、この順序で「まず顧客と課題を確かめ、検証してから広げる」筋になっているほど、説得力が増します。
WHO/インサイト:AIで「顧客の本音」を底まで掘る
最初の仕事は、作る前に顧客を理解しきることです。当社が新規事業を立ち上げた際も、最初の工程ではコードを一行も書かず、顧客リサーチに時間を使いました。対象顧客を価値観の2軸でセグメントに分け、SNSの生の声から「データに表れない本音(強いインサイト)」を抽出し、「いつ困り、いつ喜ぶか」を時間軸で一枚に可視化する、という手順です。
このリサーチと分析こそ、AIが最も効く工程です。当社は、ソーシャルリスニングや投稿の言語分析、情報収集を24時間動くAIリサーチエージェントで内製し、人手なら数週間かかる探索を高速で回しています。この「顧客の本音を起点にした課題設定」が、革新性と事業計画の出発点です。
WHAT → POC:コンセプトに変え、作る前に検証する
掴んだインサイトは、「誰に・どんな便益を・なぜ信じられるのか(根拠)」という約束=コンセプトに翻訳します。いきなり完成品を作らず、モックやLP、最小限の試作(プロトタイプ)で「本当に使われるか」を行動で確かめます。「買いますか?」と意見を聞くのではなく、登録・利用などの実際の行動で測るのがコツです。
ここでもAIが効きます。当社ではプロトタイプ生成やコンセプト検証用のLP・素材づくりをAIで内製し、検証のサイクルを速く・安く回しています。革新枠の事業計画に「どう検証して確証を得るか」が具体的に書けると、計画の現実味が大きく上がります。
WHO/WHAT/HOWを貫く体制=CAO
このWHO→WHAT→HOWを、AIエージェントの開発・運用とセットでひと続きに回せる体制が、当社の提供するCAO(Chief AI Orchestrator)というサービスです。AIで「速く作る」だけでなく、「何を作るべきか(誰の・どんな課題か)」から整理できることが、革新的な新規事業開発の土台になります。内製と外注の比較はAIを外注せず内製する選択肢でも扱っています。
補助率・上限・対象経費(革新的新製品・サービス枠)
補助上限額は従業員規模別です。「最大2,500万円」だけを見て計画を立てると、規模によっては実際に使える額と大きく開きます。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例を適用した場合 |
|---|---|---|
| 1〜5人 | 750万円 | 850万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
補助下限額は100万円、補助率は中小企業者1/2・小規模企業者/小規模事業者・再生事業者は2/3です。中小企業者でも、地域別最低賃金引上げ特例の適用を受ける場合は2/3になります。参考までに、新事業進出枠とグローバル枠は下限750万円で、上限は従業員101人以上の区分で7,000万円(賃上げ特例で9,000万円)と規模が変わります。最新の公募要領で必ずご確認ください(受給を確約するものではありません)。
対象経費と、AI開発で組み方に関わる3点
対象経費は、機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費です。AI開発のシステム構築費が対象になる点が、革新枠とAI開発の相性の良さです。
ただし、金額の見積り以前の問題が3点あります。いずれも計画の組み方そのものに関わります。
- 機械装置・システム構築費は必須。革新枠では、この区分が必ず補助対象経費に含まれている必要があります。
- 外注費は補助対象経費総額の4分の1が上限(専門家経費は5分の1、技術導入費と知的財産権等関連経費は各3分の1)。外注に寄せた計画は、そもそも金額が組めません。
- システム構築費が100万円以上なら、実績報告時に要件定義書(費用見積書を含む)または開発費用算出資料の提出が必要です。開発費用算出資料には、作業単価・作業工数・作業時間・作業担当者の勤務記録などが含まれます。
上限や閾値はいずれも税抜きで判定されます。なお、クラウドサービス利用費は「専ら補助事業のために使用される」ものが対象で、自社の他事業と共有する場合は対象になりません。また、既存の機械装置・システム等の単なる置き換えに係る経費は、区分を問わず対象外です。対象経費の誤分類は減額・失格の原因になるため、見積りは経費区分に沿って分けて取得するのが安全です。
「開発は全部外注する」という計画は通らない
見落とされやすいのが、補助対象外となる事業の規定です。公募要領は「補助事業の主たる内容そのものを他者へ外注又は委託する事業、及び具体的な補助事業の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業」を補助対象外と定めています。
前項の外注費4分の1という上限と合わせると、行き着く先は1つです。AI開発を丸ごと外注する前提の計画は、制度上そもそも成立しません。自社が主体となって開発を進め、外部は必要な部分を伴走する——この形をとれるかどうかが、申請の可否に関わります。AIの内製が現実的な選択肢になってきたことは、この制度の要求とも噛み合います(AIを外注せず内製する選択肢)。
事業計画を手伝ってもらった相手には、発注できない
もう1つ、体制の組み方に直結する規定があります。事務局は、事業計画の確認を行う金融機関や事業計画書作成支援者について「第三者として客観的な立場から関与することが求められます」としたうえで、金融機関確認書を発行した金融機関や、事業計画書の作成支援を行った事業者に対して、当該補助事業に係る見積の取得や発注を行うことは認められませんと明示しています。みなし同一事業者にあたる会社への発注も同様です。
つまり、事業計画づくりを手伝ってもらった相手に、そのまま開発を発注することはできません。補助金を使う前提で進めるなら、計画づくりを支援する相手と、開発を発注する相手は分けて設計する必要があります。支援を受ける前に、この線引きを相手と確認しておいてください。
申請の流れと注意点(後払い・交付決定前の着手NG)
流れと「誰がやるか」を、ステップごとに整理します(◎=主担当)。申請主体は一貫して自社で、支援側は伴走です。
| # | ステップ | 申請主体(自社) | 支援側(伴走) | 事務局・審査 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 公募要領の確認・対象可否の判断 | ◎ 判断 | 情報提供 | — |
| 2 | 事業計画書の作成・応募申請(革新性/付加価値額/3〜5年) | ◎ 作成・申請 | 伴走 | 受付 |
| 3 | 採択審査・結果発表 | — | — | ◎ 審査 |
| 4 | 交付申請(採択発表日から原則2か月以内・見積書を提出) | ◎ 申請 | 支援 | 審査 |
| 5 | 交付決定(着手はここから) | 確認 | — | ◎ 決定 |
| 6 | 契約・発注・AI開発(交付決定後に発注) | ◎ 発注 | 開発伴走 | — |
| 7 | 実績報告(完了日から30日以内) | ◎ 報告 | 支援 | 確認 |
| 8 | 額の確定・補助金の入金(後払い・精算) | 受給 | — | ◎ 支給 |
見積書が要るのは交付申請の段階で、応募申請の時点では提出不要です(ただし事業計画には経費の内訳を書きます)。注意点は省力化など他制度と共通で、交付決定の前に契約・発注・支払いをすると対象外になり得ます(「先に発注して後から申請」はできません)。補助金は原則後払い(精算方式)で、入金まで自社で立て替える資金繰りが要ります。賃上げや賃金台帳の整備が前提になる場合もあります。申請の基本的な流れはAI開発に使える補助金制度の選び方も参照してください。
申請は誰がやる?役割分担と責任分界
申請者・受給者は、あくまで申請主体である企業です。公募要領は、検討やブラッシュアップのために外部の助言を受けることは差し支えないとしたうえで、事業計画は必ず申請者自身で作成することを求めています。作成自体を申請者以外が行うことは認められず、発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消となります。また、事業計画書の作成支援者に対する経費は専門家経費の対象外です。伴走は支援側が担えますが、要件を満たすかの最終的な確認・判断は企業に責任があります。「専門家がすべて確認してくれる」と考えるのは危険で、自社の事業・人事・会計の状況に補助金の可否が左右されるため、申請主体が(必要に応じて専門家に確認のうえ)要件を確認することが前提です。
まとめ──要るのは「AI」だけでなく「新規事業開発のナレッジ」
ものづくり補助金(後継制度の革新枠)でAI開発を通すには、(1)第1回公募の期日と要件を正しく押さえ、(2)「単なる導入」でなく「革新的な開発」として、(3)革新性・付加価値額・3〜5年計画を事業計画で示すことが要ります。そして本質は、AIの使い方より「新規事業を成功させるナレッジ」です。顧客の本音から始め、作る前に検証し、PMFが出てから広げる。この順序が、採択にも事業の成功にも効きます。
当社は、AIエージェントの開発・運用プラットフォームの提供だけでなく、新規事業開発そのものの伴走(別途オプション・個別のご相談)にも対応できます。ただし前述のとおり、補助金を使う場合は事業計画書の作成を支援した相手には発注できません。補助金の活用を前提にご相談いただく場合は、どちらの役割でお手伝いするかを最初に整理します。伴走するのは、上場企業でWebメディア・広告プラットフォーム・エンタメ系コミュニティ構築支援など4つの新規事業を立ち上げて軌道に乗せ、独立後もAI開発プラットフォームやジュエリー・美容商品の越境ECなど複数の事業を自ら立ち上げ・運営してきた、AI×新規事業の専門家です。AIで「速く作る」ことと、「何を作るべきか」を顧客起点で見極めることの両輪で、革新的な新規事業の立ち上げに伴走します(コンサル内容により提供範囲は異なります。成果物の例:事業計画/リサーチ・インサイトレポート/プロトタイプ・検証設計)。
まずは自社がどの制度の対象になりそうか、補助金かんたん診断(無料・1分)で確認できます。新規事業の進め方から具体的に相談したい場合は、30分の無料相談で、対象テーマの選び方や事業計画の組み立てを一緒に整理します。
本記事は2026年9月時点の情報で、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(2026年6月29日公開/2026年8月28日に1.2版へ改訂)および事務局公式サイトの公開情報に基づきます。各枠の補助率・上限・付加価値額の要件・対象経費・締切は公募回ごとに変更され得ます。申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。採択・受給を確約するものではありません。運営:OUKA IT VENTURES - FZCO/国内販売代理店:株式会社KUROKO。
よくある質問
ものづくり補助金でAIの開発はできますか?
革新的新製品・サービス枠(旧ものづくり補助金に相当)で対象になり得ます。ただし公募要領は「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません」と明記しており、既製AIツールを買って入れるだけでは通りません。AIを用いて革新的な新製品・サービスを開発し、付加価値額の向上を3〜5年の事業計画で示せることが前提です。制度内容は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で必ずご確認ください(受給を確約するものではありません)。
「単なる導入」と「革新的な開発」の境目はどこですか?
市販のAIツールやSaaSを契約して効率化するだけなら「導入」で、革新枠の趣旨には合いにくいです。一方、自社の顧客・課題に合わせてAIで新しい製品・サービス・事業をつくり、付加価値(粗利)が継続的に増える計画になっていれば「開発」として評価され得ます。鍵は技術より「誰のどんな課題を、なぜ新しく解けるのか」を事業計画で語れることです。
補助金を使うと実質いくらで、申請は誰がやりますか?
「投資額 × 補助率(革新枠は中小企業者1/2、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者2/3)」で自己負担の目安を出せます。補助上限額は従業員規模別で、革新枠は従業員1〜5人なら750万円、51人以上で2,500万円です(補助下限額100万円)。採択・支給額は審査結果によります。申請者・受給者は申請主体である企業で、事業計画づくりの伴走は支援側が担えますが、公募要領は事業計画を申請者自身で作成することを求めており、要件を満たすかの最終的な確認・判断は企業の責任です。同じ経費を複数制度に重複申請することはできません。
AI開発を全部外注しても補助金は使えますか?
使えません。公募要領は「補助事業の主たる内容そのものを他者へ外注又は委託する事業、及び具体的な補助事業の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業」を補助対象外と定めています。外注費にも補助対象経費総額の4分の1という上限があります。自社が主体となって開発を進め、外部は必要な部分を伴走する形にする必要があります。