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業務自動化AI / まとめ記事

AI業務自動化とは|「AIで作る」と「AIを入れる」を分けて、任せ方を4段階で決める

更新 2026.07.20 監修 CAO
結論 この記事でわかること

AIに渡せるかどうかは、作業の種類では決まりません。決めるのは2つです。ひとつは中にAIが要るか。判断の要らない業務なら、AIで作った仕組みに、AI自体は入れないほうが安く安定します。もうひとつは、どこまで任せるか。この2つを先に決めると、ツールを選ぶ前に対象が決まります。

AI業務自動化とは、これまで人が手を動かしていた業務を、AIを使って作った仕組みに引き継がせることを指します。仕組みの中でAIが判断する場合もあれば、判断は含まず決まった処理を流すだけの場合もあります。どちらも同じ言葉で呼ばれています。

中小企業の約3割がAI活用に取り組んでいます。取り組んでいない企業にその理由を聞くと、最も多い答えは予算でもセキュリティでもありません。「活用する業務がイメージできていない」が最多で、63.4%を占めます。2位は「活用を推進する人材が不足している」で40.0%、以下、社内ルールの未整備が26.2%、セキュリティへの不安が14.5%、予算の確保が13.8%と続きます(出典:中小企業庁 2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要)。

1位が2位の1.6倍です。人も予算もセキュリティも課題ですが、その手前で対象が決まっていません。

そこで「AIでできること」を調べると、文字起こし、要約、データ入力、問い合わせ対応といった作業の一覧が出てきます。読んだ経営者は「うちにもデータ入力はある。じゃあ渡せる」と考えて着手し、そこでもう一度止まります。渡せるかどうかは、作業の種類では決まらないからです。

決めるのは2つあります。中にAIが要るかどうかと、どこまで任せるか。この2つを先に決めると、対象が決まります。

「AIで業務自動化」には2つの話が混ざっている

同じ「AIで業務自動化」という言葉が、実務ではまったく別の2つを指しています。

ひとつは、AIを使って仕組みを作ることです。 従来はプログラムを書ける人が必要だった作業を、AIとの対話で組み立てられるようになりました。中小企業白書に載る事例では、研磨加工の企業が生成AIとの対話で自社独自の情報管理システムを作り、生産管理や原価管理など30以上のアプリを社内で動かしています。作ったのは社内の人です。

もうひとつは、できた仕組みの中でAIが判断することです。 問い合わせの内容を読んで4種類に分類する、書類を読んで条件に合うかを判定する。人が事前に手順を決めきれない部分を、AIが都度こなします。

この2つは独立しています。掛け合わせると4通りになります。

従来の自動化 人が作り 手順どおりに流す 外注か、社内の詳しい人頼み 従来のAI導入 人が作り 中でAIが判断する 開発費が重くなりやすい AIで作る(中はAIなし) 判断が要らない業務は これが最も安く安定する 見落とされやすい領域 AIで作り、AIが動かす 判断が要る業務は ここまで来る AIエージェントの領域 人が作る AIで作る 中でAIは判断しない 中でAIが判断する

多くの記事は「AIで作り、AIが動かす」だけを「AI業務自動化」として扱います。しかし中小企業にとって効きやすいのは、その隣の「AIで作る、中はAIなし」です。

判断が要らない業務に、わざわざAIを組み込む必要はありません。毎朝決まった場所からデータを取り、決まった形に整えて、決まった宛先に送る。この処理に判断はありません。中にAIを入れると、費用が処理のたびにかかり、出力が毎回わずかに揺れ、なぜその結果になったかの説明が難しくなります。判断のない業務は、AIで作った、中にAIのない仕組みのほうが、安く、速く、結果が安定します

「AIで業務自動化」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、中でAIが判断するほうです。実際に効果が出やすいのは、AIで作るほうです。ここがずれていると、対象が決まりません。

以前は、作る側に回れるのはプログラムを書ける人だけでした。だから自動化は「外注するか、既製品を買うか」の二択で、自分たちで作るという選択肢は現実的ではありませんでした。

いまは、作りたい処理を言葉で説明し、出てきたものを試し、違えば直す、という進め方ができます。変わったのは作れる人の条件です。 プログラムを書けることではなく、業務を説明できることが条件になりました。業務を一番よく説明できるのは、その業務をしている人です。

この変化は、中にAIを入れるかどうかとは無関係に効きます。中にAIのない、単純な転記の仕組みであっても、以前は外注していたものが社内で作れるようになりました。「AIで作る」は、中にAIを入れない場合にこそ、費用の差が大きく出ます。

AIで自動化できる業務

作業の種類で見た全体像は、次のようになります。右端が、その作業に判断が含まれるかどうかです。

#業務領域具体的な作業中にAIが要るか
1情報の収集・転記定期的なデータ取得、システム間の転記、台帳への記録要らない
2帳票・書類の作成定型フォーマットへの差し込み、請求書や報告書の生成要らない
3通知・リマインド期限前の通知、条件を満たしたときのアラート要らない
4文書の読み取り請求書や申込書からの項目抽出書式が一定なら不要、多様なら要る
5分類・仕分け問い合わせの振り分け、書類の一次選別要る
6要約・翻訳議事録の要約、海外資料の翻訳要る
7文章の下書き返信文、提案文、求人票の草案要る
8判定・評価条件への適合判定、優先度づけ要る

1から3は、判断が要りません。ここは中にAIを入れず、AIで作った仕組みで処理するのが合っています。5から8は、人が事前に手順を書ききれないので、中にAIが要ります。

境目にあるのが4です。同じ「請求書の読み取り」でも、取引先が3社で書式が固定なら判断は不要ですが、取引先が100社で書式がばらばらなら判断が要ります。業務名だけでは決まらず、自社の実際の条件で決まります

自社の業務がどちらかを判定するには、その作業をしている人に3つ聞けば足ります。

#問い「はい」なら
1この作業をするとき、その場で考えていることはありますか中にAIが要る
2入ってくる情報の形は、毎回同じですか中にAIは要らない
3判断に迷ったとき、誰かに聞きますか中にAIが要る(かつ人の確認も要る)

1に「特に考えていない、手が勝手に動く」と答える作業には、中にAIは要りません。逆に「相手によって書き方を変えている」「例外かどうかを見ている」という答えが返れば、そこに判断があります。

聞く相手は管理職ではなく、実際に手を動かしている人です。管理職の説明は手順書に近く、実務で発生している例外が落ちます。

RPAとAIは何が違うのか

RPAは、中でAIが判断する側にはいません。人が決めた手順を、決めたとおりに実行する仕組みだからです。ただし作る手段は変わりました。以前は専門の担当者が画面上で手順を組み立てていたものが、いまはAIとの対話でも作れます。

RPAなど、従来の自動化AIで作る、中はAIなしの仕組みAIを組み込んだ処理
手順を決めるのは人。事前にすべて決める人。事前にすべて決めるAI。基準に沿ってその場で決める
作るのは専門の担当者か外注業務を説明できる社内の人専門の担当者か外注
得意なこと同じ入力に同じ出力を返す同じ入力に同じ出力を返す揺れのある入力を扱う
苦手なこと想定外の形が来ると止まる想定外の形が来ると止まる毎回まったく同じ結果にはならない
結果の説明手順を追えば説明できる手順を追えば説明できるなぜその判断かの説明が難しい
費用のかかり方作ったあとは軽い作ったあとは軽い処理のたびにかかる

いま増えているのは、ツール自体をAIで開発するという選択肢です(表の真ん中)。動き方は従来の自動化と変わらず、作る側の条件だけが変わっています。

止まることは欠点ばかりではありません。想定外で止まる仕組みは、間違った結果を出さずに人へ回ります。判断を伴わない工程で「止まること」を嫌ってAIを入れると、静かに間違えるほうへ寄ります。

実務では、どちらかを選ぶのではなく、同じ業務の中で分かれます。データを取ってきて整える工程は手順が固定でき、届いた書類を分類する工程には判断が要ります。工程ごとに、必要なところにだけAIを置きます。

任せ方には4つの深さがある

対象が決まっても、まだ渡せません。「AIに任せる」を、やるかやらないかの二択で考えている限り、多くの業務が「任せられない」に落ちるからです。

当社は自社の業務をAIに渡すとき、任せ方を4つの深さに分けて管理しています。

どの業務にも、気づく・判断する・実行する・見届ける、という4つの工程があります。4つのモードは、このどこまでをAIが持つかの違いです。

気づく 判断する 実行する 見届ける ①見つけて  知らせる AI ②やってから  報告する AI AI AI 人(事後) ③下書きまで  作る AI AI 人が確定 ④確認だけ  続ける 対象外 対象外 相手が実行 AI AIが持つ 人が持つ 人が最後に確定する

①と②の違いは「判断する」と「実行する」を渡すかどうか、②と③の違いは「実行する」を渡すかどうかです。③は②から実行だけを人に戻した形で、能力の差ではなく境界の位置が違います。

④だけ形が違います。相手が動くのを待つ工程なので、実行するのは相手であり、AIは見届けるだけを持ちます。

①から順に進むものではありません。業務ごとに、どれか1つを選びます。

① 見つけて知らせる。 出来事が起きた瞬間を検知して、記録し、人に伝えます。現実を変えないので、間違えても取り返しがつきます。向くのは、人が定期的に画面を見に行っている作業です。新しい依頼は来ていないか、在庫が下限を割っていないか。この「見に行く」時間は業務時間として計上されないまま、確実に人の集中を削っています。

② やってから報告する。 AIが実際に処理を実行し、実行した直後に人へ知らせます。人は事前に止めるのではなく、事後に確認します。向くのは、件数が多く、正常系がはっきりしていて、間違えても社内で気づいて戻せる操作です。逆に、社外に通知や書類が飛ぶ操作、お金そのものを動かす操作、取り消しに相手の同意が要る操作はここに置きません。判定は業務名ではなく、その操作を取り消せるかどうかで行います。

③ 下書きまで作る。 文面や申請内容をAIが作り、送信や確定は人が行います。向くのは、相手のある操作と、外に出る操作です。効果は「作る時間」ではなく「書き出しの心理的な負荷」に効きます。白紙から書く作業と、直す作業では、着手までの時間がまるで違います。置くときの注意は、人が直さずそのまま送れてしまう状態にしないことです。確認する箇所を決めておきます。

④ 確認だけ続ける。 依頼した処理がどこまで進んだかを追い続け、節目でだけ人に伝えます。読むだけなので安全で、しかも人の確認回数を大きく減らします。向くのは、自分では進められず、相手の動きを待つ工程です。待っている間に何度も画面を見に行く作業が、まるごと消えます。

①と④は、どちらも読むだけです。違いは対象です。①は出来事が起きた瞬間を捉え、④は状態が変わるまで追い続けます。 注文が入ったことを知るのが①、その注文が今どこにあるかを追うのが④です。

当社が運営を担う越境ECの受注業務では、受注から入金の確認までを10の工程に分けて管理しています。工程を順に並べ、どこでモードが切り替わるかを見ると、こうなります。

工程(受注 → 着金) 任せ方 1 受注を検知する 2 支払の状況を照合する 3 配送ラベルを発行する 4 配送を依頼する 5 書類を相手先へ送る 6 集荷されたことを確認する 7 倉庫への到着を確認する 8 顧客への出荷を確認する 9 顧客の受取を確認する 10 着金を確認する ① 見つけて知らせる ② やってから報告する ③ 下書きまで作る ④ 確認だけ続ける AIが現実を変える工程 人が最後に確定 読むだけ

濃く塗られた工程が、AIが実際に現実を変えている部分です。10工程のうち3工程しかありません。前後の6工程は読むだけで、1工程は下書きまでです。

②に入っている3工程は、いずれも自社の管理画面の中で状態を進める操作で、誤れば社内で戻せます。実際にお金を動かす操作と、相手先へ書類を送る操作は②に入れていません。前者は人が確定し、後者は③に置いています。

配分に偏りがあることに意味があります。実際に現実を変える②は、10のうち3工程だけです。残る7工程は、読むか、下書きまでです。「AIに任せる」と聞いて多くの人が想像するのは②ですが、実務で数として効いているのは①と④、つまり人が見に行く手間を消す部分です。

この考え方は業種を選びません。当社が自社サイトの検索順位を運用する仕組みでも、データの取得と集計と診断、改善案の起案までをAIが行い、サイト本体の書き換えと公開は人が確定します。①と③の組み合わせです。境界を引く基準は同じで、取り返しがつくかどうかです。

深さは業務ごとに決めるもので、会社として1つに揃える必要はありません。同じ会社の中に①の業務と②の業務が併存していて構いません。むしろ、全社で一律に「AIには下書きまで」と決めると、①で足りる業務まで人の確認を挟むことになり、手間が増えます。

同じ業務でも、深さを変えると可否が変わる

先に、判定1と判定2の関係を確認します。判定1で「中にAIは要らない」とした業務にも、この4つの深さは同じように当てはまります。中にAIが入っていなくても、仕組みが人に代わって動く以上、どこまで任せるかは決めなければならないからです。判定1は仕組みの中身を、判定2は人との境界を決めます。

先ほどの業務一覧に、任せ方の深さを重ねます。◎はそのまま渡せる、△は条件つき、×は避ける、—はその深さが成り立たないという意味です。

業務①知らせる②やって報告③下書きまで④確認だけ
データの収集・転記
帳票の作成
社内向けの期限通知
社外向けの期限通知×
請求書の項目抽出
問い合わせの分類
顧客への返信×
支払の実行×
契約・発注の確定×

△の条件は3つです。 ①誤りが社内で検知できること(誰かが必ず結果を見る工程が後ろにある)、②誤ったとき当日中に戻せること、③同じ処理が月20件以上あること。3つとも満たすなら◎と同じ扱いにし、1つでも欠けるなら③に落とします。件数の条件を入れるのは、月に数件しかない処理を②に置いても、例外対応の手間が削減分を上回るためです。

②が×の行は、すべて社外に出るか、お金が動くかのどちらかです。誤りが自社の外に届いてしまうと、条件の②「当日中に戻せる」が原理的に成り立ちません。ここは件数がどれだけ多くても③までです。

④に「—」が付く行は、待つ相手がいない業務です。社内で完結する転記や帳票作成には、追いかける対象がありません。③の「—」も同じで、下書きという中間物が発生しない業務を指します。

横に読むと、×だけの行がありません。顧客への返信は、実行まで任せると事故になりますが、下書きまでなら渡せます。契約の確定は任せられませんが、進捗を追い続けることは任せられます。

縦に読むと、④が付く行は限られます。相手の動きを待つ工程がある業務だけだからです。社内で完結する転記や帳票作成には、追いかける相手がいません。

「この業務はAIに任せられない」という判断は、たいてい②だけを想定して下されています。深さを1段落とすと、渡せる範囲が残ります。渡せるかどうかは業務の属性ではなく、業務と任せ方の組み合わせで決まります

深さを1段落とすと、何が変わるか

顧客への返信を例にとります。実行まで任せると事故になります。誤った内容が相手に届き、取り消せません。ここで「顧客対応はAIに任せられない」と結論すると、この業務はまるごと手つかずで残ります。

③に落とすとこうなります。問い合わせが届くと、過去の対応履歴と該当する資料をAIが集め、返信の草案を作って担当者の下書き箱に入れます。担当者は、白紙からではなく草案から始めます。事実関係が合っているかを確認し、必要なら書き直し、自分の判断で送信します。

消えるのは、履歴を探す時間と、書き出しに要する時間です。残るのは、内容が正しいかの確認と、送るという判断です。残った部分は、もともと人がすべき部分です。

さらに①を重ねると、届いた問い合わせのうち緊急のものだけを先に知らせる、という運用が加わります。①と③は同じ業務の上で同時に成り立ちます。深さは業務ごとに1つ選ぶものではなく、工程ごとに選ぶものです。

深く任せてはいけない条件

②まで任せた工程でも、条件によっては人に戻します。当社が実際に人へ戻している条件は、次の5つです。

#確認すること崩れている例崩れていたら
1処理の前提は確認できているか在庫や相手先が不確か人が確認する
2外部から拒否されていないか連携先・取引先の側で処理が通らなかった人が確認する。ここで再実行を繰り返させると、原因を確かめないまま同じ失敗を重ねます
3データは噛み合っているかシステム間で対応が取れない、入力の形式が壊れている人が確認する
4金額はしきい値の内か先に決めた上限を超えた人が確認する
5過去に扱った型か初めての相手、初めての形人が確認する。既知の正常系だけを②に置きます

5つとも満たすときだけ、そのまま実行して報告します。

この5つに共通するのは、AIの能力ではなく、前提が崩れているかどうかです。前提が揃っているうちは任せ、崩れたら戻す。しきい値を先に決めておくと、その場で迷いません。

5つのうち、実際に効くのは4と5です。金額の上限は、超えたときの損失が読めるので決めやすく、決めれば迷いがなくなります。決め方は「その金額を月に何回か損しても事業が続くか」で置きます。判断がつかないうちは、その業務で過去1年に発生した金額を高い順に並べ、上位1割の手前を上限にします。日常の9割は任せたまま、金額の大きいものだけが人に上がってきます。運用しながら上げ下げすれば足ります。

初めての型を人に回すのは、失敗の多くが「過去に一度もなかった状況」で起きるためです。既知の正常系だけを任せておけば、想定外は自動的に人のところへ集まります。

条件を決めるときは、AIができるかどうかを基準にしません。間違えたときに誰が困るかを基準にします。社内で気づいて直せる範囲なら任せてよく、相手に届いてしまうなら人が確定します。この基準なら、技術に詳しくなくても線を引けます。

全部を新しく作る必要はない

ここまで読むと、対象業務ごとに何かを作らなければならないように見えます。実際にはそうなりません。

当社がある企業の採用部門で業務を洗い出したとき、対象は30項目、合わせて月およそ640時間でした。それぞれについて実現方法を判定すると、内訳はこうなりました。

実現方法項目数削減できる時間(月)作るのに必要な時間
今あるしくみの設定を変える7約88時間約108時間
今あるしくみをつなぐ3約18時間約80時間
新しく作る19約140時間約1,030時間
対象外1約8時間
合計30約246時間約1,226時間

削減できる約246時間は、対象業務640時間の4割弱にあたります。

数だけ見ると、新しく作るものが19項目で6割を超えます。ところが削減時間で見ると、開発せずに解ける10項目が全体の4割を占めます。そしてその10項目に必要な作業時間は、全体の15%ほどです。

投入した1時間あたりの削減時間で比べると、差はさらにはっきりします。今あるしくみの設定を変える方法は、新しく作る方法のおよそ6倍です。

すでに使っているツールに、使っていない機能が残っています。グループウェア、会計ソフト、採用管理システム。その設定を変えるだけで消える作業が、たいてい数項目あります。ここを先に取ると、費用をかけずに時間が空き、その時間で次の検討ができます。

新しく作るべきものが無いという話ではありません。順番の話です。設定で解けるものを先に取り、つなぐもので次を取り、それでも残ったものを作ります。

設定で解けるものを見つける

探し方は決まっています。次の3つに当てはまる作業を書き出します。

  1. 同じ情報を2回入力している。 一方のシステムに入れた内容を、別のシステムに手で写している作業。多くの業務ソフトには、外部と情報をやり取りする機能が最初から付いています。使われていないだけです。
  2. 一覧を作るために転記している。 個別のデータは既にシステムの中にあり、それを見やすく並べるために別の表へ写している作業。集計や絞り込みの機能で置き換わることがあります。
  3. 決まったタイミングで人が思い出している。 期限の3日前に確認する、月初に集計する。通知やスケジュール実行の設定で置き換わります。

見つけたら、その機能があるかどうかをツールの提供元に直接聞きます。設定変更で済むものは、作る作業が発生しないため、翌週から効果が出ます。

順番を逆にすると、費用と期間が先に膨らみます。新しく作るものは、要件を決め、作り、検証し、現場に定着させる工程が必要です。設定で解けるものを先に処理すると、その工程を通らずに済む分だけ、成果が早く出ます。

AI業務自動化で実際に削減できた時間

AI活用に取り組んでいる中小企業がどの部門で使っているかを見ると、バックオフィス部門が73.4%、営業・販売・顧客対応部門が68.2%、製造・生産管理・物流部門が57.2%です(同白書)。人手が足りない間接業務から入っている姿が見えます。

先ほどの採用部門の案件を、実現方法ではなく業務のまとまりで分け直すと、どの業務にどれだけ時間がかかっていて、どの深さで任せる設計にしたかが見えます。

#業務現在の月間時間中にAIが要るか任せ方削減の見込み
1応募書類の選考233時間要る③下書きまで月97時間
2面接日程の調整228時間要らない③下書きまで月94時間
3面接評価・合否連絡183時間要る③下書きまで月55時間
合計644時間月246時間

3業務とも③です。いずれも最後に候補者へ連絡が飛ぶため、送信を人が確定します。日程調整は判断を含まないので中にAIは要りませんが、中身が単純であることと、深く任せてよいことは別です。ここが判定1と判定2を分けて考える理由です。

この246時間は、先ほどの実現方法別の内訳と同じ数字を、切り口を変えて見たものです。30項目を「どう作るか」で分けたのが前の表、「どの業務か」で分けたのがこの表になります。

白書の掲載事例も、同じ2つの軸で読めます。金属加工の企業は、社内で開発した自社アプリによって検品業務の年1,500時間を削減しました。社員発案のアプリは70種類に及びます。白書がこの事例に付けているのは設備投資と人材育成のタグで、AI活用事例としては扱われていません。中にAIを入れなくても、この規模の時間は空きます。 研磨加工の企業は、生成AIとの対話で生産管理や原価管理など30以上のアプリを社内で作りました。この事例は作る手段がAIで、中身は情報の一元管理です。

効果を左右するのは、道具そのものより使い方の定着です。同白書には、AIを含まないITツールについての調査結果があります。社内で研修や勉強会を実施している企業では91.4%が「想定した効果が得られた」以上と回答し、実施していない企業では80.9%にとどまります。部門間で連携できている企業では92.4%、できていない企業では65.2%です。AIを含む調査ではありませんが、道具を入れただけでは効果が出ないという構造は、AIでも変わりません。

最初の1つを決める

ここまでの内容を、着手する順に並べます。

やること通過の目安
1負荷の大きい業務を5つ書き出す月間の件数と1件あたりの時間をかけた数字が、5つとも出ている
2それぞれ、中にAIが要るかを判定する実際に手を動かしている人に、先の3つの問いを聞いた
3それぞれ、どの深さで任せるかを決める②に置くものは、社外に出ず、当日中に戻せて、月20件以上あると確認した
4実現方法を判定し、1つだけ選ぶ設定で解けるものがあれば、それを最初にした

5つ書き出す理由は、1つだけ挙げると「一番大変な業務」が選ばれやすく、それはたいてい判断が多く、渡しにくいためです。5つ並べると、負荷はそこそこでも判断が少なく、すぐ渡せるものが見つかります。

最初の1つは、間違えても取り返しがつく業務にしてください。最初に選んだ業務で事故が起きると、次の1つに進めなくなります。逆に、小さくても効果が出ると、社内で次の候補が集まりはじめます。

段4で1つだけに絞るのは、同時に複数を進めると、どれも定着しないためです。定着とは、担当者が手順を覚え、例外が出たときの戻し方を知っている状態を指します。定着しないまま次を足すと、どちらも中途半端なまま人の確認だけが増えます。

決めたあとに続く4つの作業

対象と深さが決まると、次の4つが順に必要になります。いずれも本記事の範囲を越えるため、それぞれ扱っているページを示します。

業務を選ぶ精度を上げる。 負荷を測って並べるところまでは本記事の手順で足りますが、効果と実現性の2軸で優先順位を付け、それを判断できる担当者を社内に育てる話は別です。どの業務から着手するかの見極め方で扱っています。

業務を定義する。 何が起きたら始まるのか、何を見て判断するのか、何ができたら終わりなのか。この定義が書けない業務は、深さを決めても渡せません。書き出す手順と、次に進んでよいかの通過条件は1体目を動かすまでの段取りと通過条件にあります。

道具を選ぶ。 中にAIが要るかと、どの深さで任せるかが決まっていれば、候補はかなり絞れます。逆にここが決まらないまま比較記事を読むと、機能の違いだけが目に入ります。AIエージェントツールのタイプ別比較と、決まった手順を流す仕組みとの違いはAIエージェントの作り方にまとめています。

止まる型を先に知る。 止まる原因の多くは技術ではなく、決めていないことです。導入が止まる典型的な原因を先に読んでおくと、同じ場所で止まらずに済みます。

よくある質問

AI業務自動化とは何ですか。 これまで人が手を動かしていた業務を、AIを使って作った仕組みに引き継がせることです。仕組みの中でAIが判断する場合と、判断は含まず決まった処理を流すだけの場合があり、どちらも同じ言葉で呼ばれます。判断が要らない業務は、中にAIを入れないほうが安く安定します。

AIで自動化できる業務とできない業務は、どう見分けますか。 作業の種類では見分けられません。判断の基準を言葉にできるかどうかで決まります。基準が書ければ渡せますし、書けなければその部分は人に残ります。同じ業務でも、任せ方を浅くすれば渡せる範囲が生まれます。

RPAとAIは、どちらを選べばよいですか。 どちらかを選ぶ問いではありません。手順が固定できる部分はRPAのような仕組みで足り、判断が要る部分にAIを入れます。実務では同じ業務の中で両方が使われます。

何から着手すればよいですか。 月間の件数と1件あたりの時間をかけて負荷の大きい業務を並べ、その中から判断の基準を言葉にできるものを1つだけ選びます。最初の1つは、間違えても取り返しがつく業務にしてください。

中にAIを入れるかどうかは、誰が決めるのですか。 その業務を実際にしている人が判断できます。「この作業をするとき、その場で考えていることはあるか」を問えば足ります。考えずに手が動く作業には、中にAIは要りません。

社内に詳しい人がいなくても始められますか。 始められます。必要なのはプログラムを書ける人ではなく、業務を説明できる人です。何が起きたら作業が始まり、何を見て判断し、何ができたら終わりなのかを言葉にできれば、そこから先は外部の支援でも補えます。逆に、その説明ができないまま外部に依頼すると、要件が固まらず費用だけが膨らみます。

効果が出るまでどのくらいかかりますか。 設定を変えるだけで解ける業務なら、翌週から効果が出ます。新しく作る場合は、要件を決め、作り、検証し、現場に定着させる工程が必要で、業務の複雑さによって幅があります。最初の1つを設定で解けるものにすると、この差がそのまま着手の速さになります。

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自社でどこまで持ち、どこから外に借りるかは、AI内製化の進め方と4つの選択肢で比較しています。作る場合の費用の内訳はAI開発の費用相場に、費用を軽くする制度はAI導入に使える補助金にまとめています。

当社は、中にAIを入れるべきかどうか、どの深さで任せるかを決めるところから、実際に動かして運用に載せるまでを支援しています。自社の業務に当てはめて考えたい場合は、CAOのサービス内容をご覧ください。

よくある質問

AI業務自動化とは何ですか

これまで人が手を動かしていた業務を、AIを使って作った仕組みに引き継がせることです。仕組みの中でAIが判断する場合と、判断は含まず決まった処理を流すだけの場合があり、どちらも同じ言葉で呼ばれます。判断が要らない業務は、中にAIを入れないほうが安く安定します。

AIで自動化できる業務とできない業務は、どう見分けますか

作業の種類では見分けられません。判断の基準を言葉にできるかどうかで決まります。基準が書ければ渡せますし、書けなければその部分は人に残ります。同じ業務でも、任せ方を浅くすれば渡せる範囲が生まれます。

RPAとAIは、どちらを選べばよいですか

どちらかを選ぶ問いではありません。手順が固定できる部分はRPAのような仕組みで足り、判断が要る部分にAIを入れます。実務では同じ業務の中で両方が使われます。

何から着手すればよいですか

月間の件数と1件あたりの時間をかけて負荷の大きい業務を並べ、その中から判断の基準を言葉にできるものを1つだけ選びます。最初の1つは、間違えても取り返しがつく業務にしてください。

中にAIを入れるかどうかは、誰が決めるのですか

その業務を実際にしている人が判断できます。「この作業をするとき、その場で考えていることはあるか」を問えば足ります。考えずに手が動く作業には、中にAIは要りません。

社内に詳しい人がいなくても始められますか

始められます。必要なのはプログラムを書ける人ではなく、業務を説明できる人です。何が起きたら作業が始まり、何を見て判断し、何ができたら終わりなのかを言葉にできれば、そこから先は外部の支援でも補えます。

効果が出るまでどのくらいかかりますか

設定を変えるだけで解ける業務なら、翌週から効果が出ます。新しく作る場合は、要件を決め、作り、検証し、現場に定着させる工程が必要で、業務の複雑さによって幅があります。最初の1つを設定で解けるものにすると、この差がそのまま着手の速さになります。

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